【2025年4月・10月施行】育児介護休業法改正分かりやすく解説

2024.10.23 2024.11.20

育児介護休業法は、子育て世帯や家族の介護をしている労働者が、生活と仕事の両立を図れるよう支援をし、少子化が進む日本経済・社会の発展に繋がることを目的とした法律です。

妊娠・出産・子育て・介護などにより、仕事を続けることが困難になり退職をする人もいます。ライフステージの変化にともない働き方も変化をする必要があります。

2024年5月2日に育児介護休業法等の法改正が国会で可決し成立しました。2025(令和6)年4月1日と2025年10月1日に改正された育児介護休業法のが施行が予定されています。

2025年4月施行育児介護休業法改正の概要

改正法による大きな変更ポイント

  • 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  • 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進、強化
  • 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

2025年4月施行の育児介護休業法改正は、女性だけではなく男性も積極的に子育てや介護に参加し、仕事との両立ができるように労働者を支援する措置を講じることです。

現行の育児介護休業法や次世代育成支援対策推進法を改正するもので、働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設に関する規定、ならびに仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化に関する規定は、2025年10月1日施行を予定しています。

育児や介護に関する問題は、日本において大きな課題であるため、法改正も多くあります。労働者である子育て世代の人も、事業主や人事に携わる人も育児介護休業法の改正は、理解しておきましょう。

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

改正による変更ポイントになっている子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充を具体的に見ていきまょう。

出典:令和5年12月26日労働政策審議会雇用環境・均等分科会報告 概要

  • 働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設
  • 残業免除の対象範囲拡大!3歳以上小学校就学前の子も対象
  • 子の看護休暇の拡大!行事参加等の場合も取得可能
  • 3歳未満の子を育てる労働者に対して、事業主は、努力義務の対象にテレワークを追加
  • 仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化

働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設

育休明けに職場復帰をする際に、時短勤務を選択するワーママが多くいます。しかし、現行の育児介護休業法において、時短勤務は子供が3歳になる前日までとしています。企業のなかには、3歳以降の時短勤務を認めているケースもありますが、その数はとても少ないのが現実です。

そのため、子どもが3歳以降時短勤務が不可能になったワーママは、家族のサポートが受けられない場合、子育てと仕事が両立できずに、退職をする・正社員を辞めてパートで転職をするというケースが多くあります。

2025年4月施行の育児介護休業法改正により、事業主に対して、3歳~小学高就学前の子を養育する労働者に関して、柔軟な働き方を実現することを義務化(改正法23条の3第1項)にしました。子育て世代の柔軟な働き方を実現するために、事業主は事業者ごとの事情に応じて、以下のうちから、事業主が2つ以上を選択して講ずる義務があります。

働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設により、子どもが3歳になっても安心して仕事を続けられるように改正されています。

  • 始業時間の変更
  • テレワーク(10日/月)
  • 短時間勤務
  • 新たな休暇の付与(10日/年)
  • その他働きながら子を養育しやすくなるための措置
    (保育施設の設置運営等)

事業主が講じた当該措置について、事業主は労働者に対し、個別の周知および意向確認を行うこと(改正法23条の3第5項)も義務付けてれており、労働者が事業主に対し、実施された当該措置やそれに関する内容に対して伝えた意向を理由に、解雇や不利益な取扱いをすることは認められていません(改正法23条の3第7項)。


残業免除の対象範囲拡大により、3歳以上小学校就学前の子も対象

現行法では残業免除(所定労働時間を超える労働を残業とする)で対象となるのは、子どもが3歳になるまでとしています。
近くに義実家や実家など、残業をしている間に子どもの保育園のお迎えや食事・入浴などの子育てのサポートをしてくれる人がいない限り、残業をすることは現実的に無理があります。

理解のある職場で、子どもが小さいうちは残業をしなくて済むように配慮をしてもらえるワーママもいるかも知れませんが、職場によっては、子どもが3歳になったのだから時短勤務も残業も他の社員同様にするべきだという雰囲気があり、残業を断り切れなかった人もいるでしょう。

残業免除の対象が拡大することで、仕事と子育てのライフワークバランスが図りやすくなるとともに、残業を断らなければならない罪悪感や、職場の子育てに対する温度差によるストレスも軽減されるのではないでしょうか。

子の看護休暇の拡大!行事参加等の場合も取得可能

看護休暇とは、小学校就学までの子どもがけがや病気の看病や、予防接種・健康診断などのためある休暇です。労働者1人に月一年度で5日取得することができます。(子どもが2人以上の場合は10日)ほとんどの会社では無給扱いですが、子どもの看病で仕事をを休まなくてはならない時に助かりますよね。

現行法では労使協定の締結により、引き続き雇用された期間が6ヶ月未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者は除外できるとされていましたが、法改正により見直しがされました。

現在 改正後
名称 子の看護休暇 子の看護等休暇
対象となる子の範囲 小学校就学始期に達するまで 小学校3年生修了までに延長
取得事由 病気・けが・予防接種
健康診断
感染症に伴う学級
閉鎖等
入園(入学)・卒園式を追加
労使協定の締結により除外できる労働者 ①引き続き雇用された
期間が6か月未満
②週の所定労働日数が2日以下
①を撤廃し②のみ

3歳未満の子を養育する労働者についてテレワークが努力義務に

3歳未満の子を養育する労働者が育児休業をしていない場合に(子どもが3歳になる前までに職場復帰をしている)、テレワーク(在宅勤務)の措置を講ずることを事業主に対して、努力義務として課します(改正法24条の2項)。

努力義務に法廷拘束力はなく、事業主の積極性がカギとなります。女性に長く会社で働いて欲しい・子育て中のワーママでっても経験を高く評価している企業は、ワーママを即戦力と考え、自主的に労働者の仕事と子育てのワークライフバランスを図りやすい職場環境を整備することでしょう。

政府から努力義務と課せられている場合、遠くない将来で努力義務から完全義務になる可能性が高くあります。国としてみると、3歳未満の子を養育する労働者についてテレワーク措置を完全義務にするための準備期間として、法改正に盛り込んだと解釈することができます。

仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化

令和5年12月26日労働政策審議会雇用環境・均等分科会報告 概要

労働者が事業主に対して妊娠・出産などを申し出た場合、事業主は労働者に対して、仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し、その意向に配慮することが義務付けられます(改正法21条2項・3項)。また事業主は、労働者から聴取した以降の内容を理由として、労働者に対し解雇やその他不利益な取扱いをしてはなりません(改正法21条6項)。

妊娠中・子育て中のワーママに対して、働き方や今後のキャリアについて、事業主は個別に意見をしっかりと聞き、ワーママに対して配慮を行うことを義務とし、それを理由に不利益に扱うことがあってはならないとしています。

法的に義務となることで、子育てと仕事の両立がしやすくなる、今までマタハラ・ママハラ・マミートラックで悩んでいた人が減ることを期待したいですね。また、パパ(男性)が産後に育休を取得することも法律で認められていますので、積極的に子育てに参加しやすい社会になるでしょう。

面接実施時期

  • 従業員が妊娠、出産を申し出た時期
  • 3歳になるまでの適切な時期(定期的な面談が望ましい)
  • 育休からの職場復帰時や従業員からの申し出があった際にも面談を実施することも提案されているので、面談は定期的に行うといいでしょう

面談時のヒヤリング内容

  • 育児休業や産後のパパ育休の取得意向
  • 従業員の個別の意向(勤務時間帯・勤務地・両立支援制度の利用期間)
  • ひとり親家庭や子どもに障害がある場合などの家庭の事情や意向

意向の配慮

  • 始業・終業時刻の調整
  • 就業場所の調整
  • 業務量の調整
  • 子の養育に関する制度または措置の利用期間の見直し
  • その他労働条件の見直し

意向の配慮でのさらに望ましい内容

  • 子どもに障害がある場合、短時間勤務制度や子の看護休暇等の利用期間の延長
  • ひとり親家庭の場合、従業員が希望するときは、子の看護休暇などの付与日数に配慮



育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成視点対策の推進・強化

出典元:厚生労働省育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

2025年の法改正では、育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成視点対策の推進・強化も大きなポイントです。

育児休業取得状況の公表義務が常時雇用300人以上へ

改正のポイント

    現行法:常時雇用従業員1,000人以上の企業
    改正法:常時雇用従業員300人以上の企業

2023年4月の育児介護休業法改正で、常時雇用するする労働者数が1,000人以上の企業に対して育児休業の取得状況を年に1回以上好評する義務が科せられましたが、2025年4月の法改正では、育児休業取得状況の公表義務範囲の対象が、常時雇用300人を超える企業に拡大されます(改正法22条の2項)。
公表を義務付けられている内容は、育児休業を取得した割合もしくは、育児休業等と育児目的休暇の取得割合です。

状況把握・数値目標の義務

加速する少子化に歯止めをかけるべく、次世代育成支援対策推進法についても改正があります。労働者が、育児休業を取得しやすい環境が整うことで、子育てと仕事を両立しやすくなることが目的です。
常時雇用従業員人数101人以上の企業に対しては、義務としており、常時雇用従業員人数が100人以下の企業に対しては、努力義務としています。

数値目標の設定を義務化

  • 育児休業の取得状況(男性の育児休業等取得率)
  • 労働時間の状況(フルタイム労働者の各月の時間外・休日労働時間)

次世代育成支援対策推進法2035年までに延長

育成支援対策推進法は、現在有効期限が2025年(令和7年)3月31日までとなっていますが、法改正で10年間延長し、2035年(令和17年)3月31日とすることが決定しました。
次世代育成支援対策推進法は、育児介護休業法と切っても切れない、連動背の高い法律であり、日本の少子化を食い止め、次なる日本の未来を担う子供たちが健やかに生まれ育つために、環境を整えるための重要な法律です。

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